2011年10月1日土曜日

息子への手紙:僕が親父から学んだこと

2011/09/30

陸へ。

もう少しでパパの癌が再発して、1年になろうとしている。この1年、僕は命の意味、自分が生まれてきた意味について、考え続けてきた。

でも、正直いまだによく分かっていない。誰かに何かを伝えたい。自分にしか出来ないことが、必ずあるはず。それがまだ、何なのかつかみ切れていない。

昔、マイケル•キートン主演で、末期癌患者の父親が、髭のそり方やネクタイの結び方をビデオに撮って、息子に残すというような映画があった。

でも、今の時代そんなものは必要ない。ネットで検索すれば、どんな情報でもでてくる時代だ。

僕が父親から学んだもの、それは家族の為に真摯に、実直に働く姿勢だった。そうだ、背中で語るタイプだ。

小さな工務店のオヤジ。それこそ、日経も読んでいないし、メールもネットも使いこなせるわけでもない。なにか特別なコトを教えてくれたわけではない。

でも、そんなことより、人生への、そして自分の家族への向き合い方を見せてくれた。

僕はそんな背中を、君に見せることが出来るかな?いつまで伝えられるか分からない。

「家族を守り、自分の仕事に真摯に向き合う。そんな男になってほしい」

そんな気持ちを、少しでも君に伝えることが、いまの自分の使命なのかな。と、思う。まぁ、でもまだ2歳だもんな。分からないよな…。

2011年9月27日火曜日

半年ぶりに、入院中です…。

ぼくは抗がん剤投与のためのポートという器具を鎖骨のあたりに埋め込んでいます。

先月までは順調でしたが、今月に入って、なぜかそれが詰まった感じがして、薬剤の投与中に痛みも出てきました。

先生に相談した結果、ポートの入れ替え手術となりました。日帰りでできるカンタンな手術の予定でしたが…

昨日、いざ開けてみると、静脈につながってるハズのポートのチューブが断線して、流れちゃってました。

局所麻酔ですから、先生の会話はすべて聞こえます。「こらアカンな、心臓までいってもうた」…って。焦りました。えー、それ大ごとじゃないスか。

といことでポートの入れ替えは一旦中止して、心臓カテーテルの手術室に移動。画面が6台あって、デイトレーダーのトレーディングルームのようなオペ室。

そこで、内科医の先生による、チューブ抜去手術を受ける事に。ほんと、カテーテルってすごいね。太ももの静脈から入れたワイヤーみたいなのが、体の中をどんどん進んで行く。

それを僕も画面で見て「おお~」とか言いながら手術を受けてました。心臓の近くまできて、ワイヤーの先端の輪っかを広げ、細いチューブをつかみにいきます。

なかなかキャッチできませんでしたが、10分ほど格闘して、ついに輪っかの中にチューブの先を入れることに成功!!

そのまま、静脈の中を引っ張り出してきます。長さにして15センチ程度でしょうか…取り出したチューブも見せてもらいました。

カテーテル手術は、外科手術と違って体に負担も少なく、麻酔の注射以外は、痛みもほとんどありません。これからもどんどん進化しそうです。文字通り、体感しました。

医龍というドラマで遠藤憲一が扮する凄腕の心臓カテーテル医師が出てて、興味はあったのですが、まさか自分がカテーテル手術を受けるとは思ってませんでした。(笑)

で、昨日と今日は、念のため入院。今年の三月に入院していた、馴染みの病棟。看護師さんに「痩せましたね…」って言われちゃいました。明日、退院予定です。

2011年9月4日日曜日

メトロノーム

2011/09/04

先日、ワールドビジネスサテライトでやってたが、集中力UPにメトロノームが効果的らしい。

一定のリズム(116BPM?)のメトロノームの音を聴きながら作業すると効率が上がるという研究結果が、アメリカの大学ででたらしい。

インタラクティブメトロノームという、体系だったプログラムもあるみたい。

早速、iPhoneアプリをダウンロードして流してみました。

Steinway & Sons のめちゃカッコいいアプリが無料であった。これを、Bluetooth のイヤホンで流して聴いてみます。

2011年9月2日金曜日

【書評】ポモドーロテクニック入門

2011/09/02




僕はあんまり集中力がない。それでも、なんとか今まで自分で仕事を得て、生きてこれたのは、締め切り前のガッツと、まぁ「うまいこと言って」切り抜けてきたからだ。

いろいろと時間管理術や、GTD(Get Things Done : 物事を終わらせるテクニック)やら、読んできたけれど、なかなか長続きしなかった。

でも、整理整頓や掃除は好きだし、物事を管理するプロセス自体を勉強するのは苦痛でもない。ただ、複雑なのがダメだと気がついた。整理整頓なら、とにかく不要なものを処分する。シンプルに。それなら長続きする。

だから、時間管理もシンプルなら続くのではないか。と思っていたが、究極にシンプルな方法を発見した。それが、この「ポモドーロテクニック入門」。

その方法は、キッチンタイマーをセットして、25分間測る。その間、ぐーっと集中して作業や仕事をして、5分休憩する。この25分+5分を1ポモドーロと計算する。

そしてまた25分間、集中して5分間休憩する。

これを一日何回できるか?計測していくのがポモドーロテクニック。4ポモドーロで一度長めの休憩をとる。

たった25分?そんなの短すぎて、楽勝だな。と思うんだけど、やってみると以外としんどい。3くらいやると、ヒーヒー言う。陸上のサーッキットトレーニングみたいなキツさかも。

一日5ポモドーロ、6ポモドーロ集中しただけでも、かなり仕事は進む。え、たった2〜3時間じゃないか。でも、それほど普段は集中してないんだな。これが。

この本ではできるだけ、紙と鉛筆とキッチンタイマーで管理するように勧められているんだけど、実に秀逸なiPhoneのアプリが売られているので、僕はそっちがオススメ。

http://itunes.apple.com/jp/app/pomodoro-time-management-lite/id323224845?mt=8


いつも持っているiPhoneで計測したほうが、絶対に楽。それに毎日のポモドーロ数も計測してくれるし。

でも、一応キッチンタイマーも買いました。電池が少ないときとかは、こちらで代用。でも、カチカチいって集中できないのでは・・・思われる方もいるかもしれませんが、実はそれが逆にいいのです。

集中力アップのテクニックについては、続きはまた、明日。


2011年8月27日土曜日

息子への手紙:鍛冶屋になるには…

2011/08/27



陸へ。

今日、フランスのことわざで、とてもいいものを見つけたので、君に伝えたいと思う。それは、

C'est en forgeant qu'on devient forgeron.

だ。日本語に訳すと「鍛冶屋になるのは鉄を鍛えながらだ。」という意味らしい。僕はこの言葉は、人生の大きなヒントだと思った。

自分の経験に照らしあわせても、この言葉は真実だ。僕はウェブ制作の仕事を10年弱やってるけど、ほとんど独学だった。

ネットで知識を得たり、書籍なんかで勉強した。

師匠といえる人は1人だけいて、DTPもWEBもできる女性のデザイナーさんの横に机をおいて、仕事をしながら勉強させてもらった。

WEBの勉強をしたいとか、マーケティングの勉強をしたいと言って、相談をされることはよくあったけど、そういう人はたいてい、いつまでたっても出来るようにならない。

そもそもWEBやマーケティングなんて、仕事にするのに何の資格もいらないのだから、学校に行く必要もない。

自分は今日からWEBデザイナーだ、マーケッターなんだと決めて、なんとか仕事をとってきて、やっていく。それが一番手っとり早い。

そして、これは仕事だけの話じゃない。誰もが願う「幸せ」についても同じことが言えるんじゃないか。

「お金があれば、幸せになる」
「いい会社に入れれば、幸せになれる」
「彼女がいれば…」
「家族の仲が良くなれば…」

でも、これってその条件が揃わなければ、いつまでたっても不幸なわけだ。

今、幸せでなければ、この先ずっと幸せになれるワケがない。日々の中で幸せを見いだすことが、幸せになるための唯一の方法だと思う。

鉄を打ちながら、鍛冶屋になるように、毎日幸せのタネを見つけながら、幸福な人生を歩んでくれたら、僕はうれしい。

2011年8月25日木曜日

体重が増えない!

2011/08/25

暑くなってきてから、ずいぶん体重が落ちた。昨日、体重計に載ると40.2kgで愕然。なんで増えないんだ!けっこう食べてるぞ。と怒りたくなった。

僕のストーマはイレオストノミーと呼ばれるもので、食べたものは、胃を通って小腸からお腹に開けた穴から出てくる。便と言うよりも、ほとんど水分+砕いた食べ物という感じ。

ご存じかもしれないですが、食べ物の栄養素は小腸で吸収され、大腸では食べ物の水分を吸収します。僕の場合は、大腸を通過しないので、水っぽいワケです。

僕の場合、おそらく小腸も消化吸収力が弱いのでしょう。食べても食べても、ザルのように流れていくだけって感じです。

30も半ばになってくると、周りの友人も肉付きが良くなってくるようで、「肉あげたいわー」とみんな言ってくれますが、ほんとに欲しい。

体重増量用のプロテインなんかも飲んでるんだけどな…

2011年8月21日日曜日

【書評】日経ビジネスアソシエ9/6号


2011/08/21 空→雨→傘→WTD

今週の週間ダイヤモンドは、会議やプレゼン、営業、文章を書くのが苦手な人にピッタリだ。

もちろんFacebookページの構成を考えるのにも役立つはずです。

その内容は…空・雨・傘・WTDのフレームワークで、"ストーリー"を作り「伝える力」をアップさせるといもの。
西の空が暗い(事実・状況の把握)

雨が降りそう(状況に対する解釈)

傘を携帯する(解釈からくる行動)

この3つのフレームワークに沿って、ストーリーを作ると話は伝わりやすくなる。

お客が減っている(空)

サービスの低下が原因(雨)

従業員教育の徹底が急務(傘)

そしてWTD(How to do)で具体的な実行プランを作る。この空、雨、傘は勝間和代さんも、著書でよく取り上げていましたが、ビジネスだけでなく、様々なコミュニケーションシーンで使えるテクニックだと思います。

2011年8月20日土曜日

頂き物

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モナヴィー。ワインに見えますが、実はアサイージュース。盟友、古山さんに頂きました!こんな高級感あふれるジュースなかなか無いですね!

2011年8月19日金曜日

君に残したい言葉

僕が最近ブログを再開した理由は、自分の息子にメッセージを残したかったから。というのもある。

息子のりくは二年半前に生まれた。

本来、父親はいろいろなことを、自分の子に教えるもの。

学校の勉強、仕事のこと、社会生活とは何か、生きるということ、そして死ぬこと。

言葉にしなくても、背中で語る親もいる。ウチの父親も、寡黙で、背中で語るタイプだ。

いつか君がこのブログを読めるようになった時に、ひとつでも君の人生に役立てばいいなと思う。

そんな気持ちです。

2011年8月17日水曜日

僕のガンに対する向き合い方

自分自身が「ガン」をどう考えているか。それを、ここに書き記しておきたいと思います。

残念なことに、今や日本人の2人に1人はガンになり、3人に1人はガンで亡くなります。ご家族にガン患者がいるという方も、少なからずいらっしゃるかと思います。この文章が、そんな方の一助になれば幸いです。

昨今「ガンは今や治る病気だ」というのを、よく耳にしますが、これは大きな間違いだと言わざるを得ません。人間がガンについて知っていることは、ごくごく僅かだということが、最近の研究で分かってきたからです。

私たちの細胞は日々、新陳代謝を繰り返し行い、数年たてば、全身の細胞が入れ替わってしまいます。細胞は通常まったく同じようにコピーされ、遺伝子情報は引き継がれていきます。

しかし、一日に何万もの遺伝子コピーを行うので、中にはコピーミスをしてしまう細胞が出てきます。このコピーミスは、健康な人の細胞でも毎日起こっていますが、免疫が異常な細胞を排除して問題が起きないように対応しているのです。

ところが何らかの原因で、このコピーミスを見逃してしまうと、さらにそのミスをした異常な細胞のコピーが生まれ、どんどん本来の遺伝子からかけ離れた組織が増殖してしまう、それこそがガン細胞です。
なぜ胃ガンや大腸ガンの患者が多いのかというと、それらの臓器は、粘膜などの新陳代謝が活発で、遺伝子をコピーする回数が多いため、ガンが生み出される確率が高いのです。

ガンはウイルスや、菌によって発症率が高くなるものもありますが、基本的には自分自身が生み出すものなんです。自分の細胞とガン細胞は極めて近いため、ガンだけを攻撃する薬を作りだすのは、非常に難しいのです。

このメカニズム自体は、既に解明されていました。しかし、近年の「がんゲノム解析」により、その異常な遺伝子のバリエーションの多さ、そして異常な遺伝子どうしの結びつきの多さが、人間の想像をはるかに越えていたということが分かってきたのです。

ガン細胞の遺伝子を解析する「がんゲノム解析プロジェクト」は、ヒトゲノム解析よりも、何倍も時間がかかると言われています。前述した通り、ガンのパターンは人によってあまりにも違い、多すぎるからです。この解析が終わって、ようやくガンを根治するための、ロードマップが描けるのです。

世界の優秀な頭脳が集まって、世界最速レベルのスーパーコンピューターを使って、必死にガン遺伝子の解析は進められていますが、実際はまだ全然分かっていない。今後50年、100年で分かるんじゃないかという、そういうレベルだそうです。

現在のガン治療というのは、地図もなければコンパスもない、ただ闇雲にガンに効きそうなものを、トライ&エラーで見つけ出しているのに過ぎません。全身に影響を及ぼすような毒(実際に毒ガスから抗ガン剤の歴史は始まってます)で対応するしか、現在はうつ手だてがないのです。

ガンの話で、必ず出てくるのが代替医療ですが、繰り返しになりますが、ガンというのは人によって全然性質が違うので、ある人に効いた方法が、万人にあてはまるのかというと、極めて疑問が残ります。とくに「これさえ飲めば治る」というのは、誇大広告以外の何者でもないと思っています。

大腸ガンの抗ガン剤だけでも、いくつもの薬があり、その組み合わせで無数の治療パターンがあり、それが効くかどうかを細かく診ていくのです。それが、ただ何か一つの物質や食べ物を摂取しただけで、どんな患者のどんな臓器のガンも治るというのは、あまり現実的ではないと感じてしまいます。

実際に米国のメリーランド州、フォート・デリックにある、アメリカ国立がん研究所ナチュラル・プロダクト・レポジトリーでは、自然物質の中から抗ガン作用のある物はないかと、しらみ潰しに調べています。キノコから、深海の貝殻から、あらゆる物のエキスを抽出し、実際にガン細胞に注入し、数十万の有機物を調べあげてきた結果、今のところガンに効くものは一つもありませんでした。

だからといって、代替医療、民間療法、東洋医学など全てがダメだと否定しているわけでは、ありません。私にとってこれは効くのだと確信して、その治療に期待すればプラシーボ効果もあるだろうし、ラッキーならばその治療が効くタイプのガン患者かもしれません。

ただ、僕は代替医療というものは、一点張りで命を賭けてまでやるには、ちょっとリスクが高すぎると思っています。ある人にとっては、真実であっても、それが自分にとっての真実かどうかは、フタを開けてみないと分からないからです。

ガンの本質というものが分かっていない以上、対抗する手段には限りがあります。現在の進行ガン(再発や転移があるような進んだ状態のガン)の治療は、まるで敵の大軍に攻められて、城に籠城するようなものです。抗ガン剤は最初のうちこそ効きますが、ガン細胞は耐性をつけて、再び攻撃をしてきます。
石垣を登り、門を破り、塀を越えて、どんどん攻め込んでくる。

抗ガン剤を変更し、それもまた効かなくなる。繰り返すうちに、最後は万策尽きてしまいます。まるで、二の丸、三の丸と突破され、最後は本丸に大軍が押し寄せてくるように。
なんとか敵を押しとどめる。時間を稼ぐ。ツキがあれば、寛解という、ガンが進行しない状態になるかもしれない。「一時休戦」を目指す。それが進行ガンに対する、今の医療の限界なのです。

以上が僕のガンに対する認識であり、細かい部分では間違った知識を持っているかもしれませんが、だいたいの部分では極めて現実的な認識をしているのではないかと思っています。

これではまるで希望がない。

そう思われた方もいるかもしれません。現在の治療の限界を知り、無邪気に代替医療に期待を寄せることも出来ない。そんな患者は、不幸なのでしょうか?

僕はそうは思いません。「ストックデールの逆説」という言葉があります。ストックデールは「ハノイ・ヒルトン」と呼ばれたベトナムの捕虜収容施設で7年半もの間、過酷な拷問を受けながらも、不屈の精神で耐え抜き、最後には米国に帰国したベトナム戦争の英雄です。

彼は後年インタビューでこう答えています。「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実の中でもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない」(ビジョナリー・カンパニー2より抜粋)

楽観主義者は、「この施設から、もうすぐ出られるはず」という淡い期待を持ち続け、最後には失望の中で死んでいったそうです。

私が持っている勝利の確信とは何か?それは、残りの人生において勝利し続けるという確信です。
僕にとっての勝利とは、一瞬一瞬を100%で生きること。過去を後悔しながら生きるのも、未来を案じ悩みながら生きるのもやめて、今この瞬間を精一杯に、幸せに生きることです。

たとえガンをわずらっていても、幸せでありつづけること。"Unconditonal Happiness"(無条件に幸せであること)こそが人生に勝利する唯一の方法だと思います。

財産を築くことや、名声を得ることを人生の勝利だと思うならば、その人は不幸です。なぜなら、死んだ瞬間それらは全て意味を失い、最後は必ず敗北する運命にあるからです。

2011年8月13日土曜日

闘病記

3月の手術を受けた後、詳しい状況をお伝えできず、ご心配をおかけしている方も多いので、近況報告を書きたいと思います。

まず、3月の手術の内容ですが、再発大腸ガン(腹膜播種)の外科的手術でした。

腹膜播種(ふくまくはしゅ)というのは、ガン細胞が腹膜という「おなかのまく」の中にまるで種をまくように、散らばってしまっている状態です。微少なガン細胞が拡散しているので、外科的な処置、つまり手術によって取り除くというのは、非常に難しいとされています。

最初にガンの手術をしたのは2006年の12月。ガン細胞が腸管の外にわずかに顔を出しているだけで、リンパ節への転移もなし。再発なんてしないだろう。勝手にそう思い込んでいました。それだけに、この再発はショックでした。

通常であれば、抗ガン剤による化学療法を選択し、その生存平均期間は14ヶ月。統計方法や、病院によって期間が少し違うものもありましたが、だいたい腹膜播種になれば1年~2年の余命というのが相場だと、わかりました。

2010年の10月にこの診断が出た時に、主治医が勧めてきたのは、この化学療法でした。標準治療と呼ばれ、外科医の立場からすれば、お決まりの敗戦処理のピッチャーをマウンドに送るような、そんな治療だと感じました。

しかも、この標準治療をやったところで、わずか数ヶ月の延命効果しかありません。それはデータとして出ているし、副作用でQOL(Quolity Of Life)を下げてまでやる必要はないと考えていました。

有効な治療法なし。もう、半分死んだ気でいました。

診断が出てからは真剣に様々な治療方法を検討しました。重粒子線治療、免疫療法、減量化学療法、温熱療法、先端医療から民間療法まで検討しましたが、どれも決定打に欠ける…。

そんな中、たまたま見つけたのが、現在の主治医である米村医師です。腹膜播種のエキスパートで、国内でも数少ない、腹膜播種の外科手術を行える医師。

拠点のひとつが大阪の岸和田にある病院ということで、東京から西宮への引っ越しを決めていた自分には、好都合でした。

後から知ったことですが、米村医師の手術を受けにヨーロッパやアメリカから患者さんが訪れることも珍しくないそうです。ビートたけしのテレビ番組でも特集されたことがあるようです。

ただ腹膜を手術により摘出するということは、他の医者からすれば、かなり過激でリスキーな方法らしく、最初の主治医や、セカンドオピニオンを受けた医者からは「この手術はやめた方がいい」というアドバイスをいただきました。

いろいろ検討した結果、どうせ長くもたないことが分かっているのだから、リスクを負っても米村医師の手術をしたい。そう思いました。こうして、治療方針を決定しました。

米村医師にはじめて会ったとき、やはり膨大な数の腹膜播種患者をみてきて、さらに手術も数多くこなしているからか、信頼できる先生だと確信できました。

2010年の年末から、手術に備えて抗ガン剤治療を開始しました。FOLFOX呼ばれる、大腸ガンには定番の化学療法で、シスプラチン、5ーFU、レボホリナートといった抗ガン剤を組み合わせて投与します。

岸和田の病院で3時間~4時間ほどベッドで投与し、残りの48時間はペットボトルみたいな容器を首からぶら下げて、自宅で投与します。

これらの薬は大きなガン細胞を小さくし、小さいガン細胞
を消していきます。それと同時に、通常の細胞にもダメージを与えるため、吐き気や手足のしびれ、味覚障害といった副作用がでてきます。

この時、私の腹膜内ではガン細胞がどんどん増殖し、最初に見つかった精嚢という臓器周辺から、膀胱、直腸に浸潤(転移)していました。これらは、腹膜の最下部に位置しています。

これらの臓器をまとめて摘出するということは、その後、とても不便な生活を強いられることになります。ストーマと呼ばれる穴を、腹筋のあたりに開けて、排便、排尿をそこから行います。

しかし、背に腹は替えられない…。こうして、3月の手術を、迎えることになりました。

米村先生の腹膜播種治療では、手術前の化学療法と、手術後の化学療法に加えて、手術中にも抗ガン剤を用いて治療を行います。温めた抗ガン剤を、開腹した状態の腹膜に流し込む、温熱化学療法という手法。これにより、再発率が下がるというデータがあるそうです。

腹膜内に点在するガンを切り取り、さらに上記のような特殊な治療もおこなうため、手術には時間がかかります。予定では5時間の手術でしたが、実際には9時間の時間を要しました。

横隔膜(腹膜の上部にあたる)にも転移していて、かなり広範囲に広がっていたのが、時間がかかった要因ではないかと思います。手術が終わるまで、妻も母も気が気ではなかったと言っていました。横隔膜などはあまり大きく切り取ると、手術後の経過が悪くなるそうで、ギリギリのところだったそうです。

手術の後は、10本以上の管につながれて苦痛の中で、ただただ時間が過ぎるのを待つしかありません。どちらに寝返りをうっても、管がわき腹や背中に食い込んで痛み、仰向けになると腰が痛み、もちろん開腹した傷にも痛みがあります。まともに睡眠もとれませんん。

手術後2日目は集中治療室のとなりのベッドの患者さんが亡くなったのですが、どうやら同じ手術を受けたようでした。あまり高齢の方には、負担の大きい手術だと思います。

絶食、絶水の期間も長く、10日くらいで、ようやくお粥など食べ始めました。60キロあった体重は40キロ近くまで落ちて、歩くことすらままならない。そんな状態でした。

1ヶ月の入院で、楽しみといえば、テレビだったのですが悲しいことに東日本大震災が起き、震災報道一色になってしまいました。最初はニュースを観ていましたが、だんだん精神衛生上よくないんじゃないかと感じて、テレビはあまり観ず、小説を読んでいました。

入院中は、ストーマ管理のやり方を看護士さんに教えてもらいました。腹部に開けた穴には袋をつけ、便をためていきます。その袋の交換にはコツがあって、慣れるまでは何度も漏れるわけです。

ご飯も食べれるようになって、2011年4月の初旬に退院しました。約一ヶ月の入院で、足も弱っていて、最初は散歩しても100メートルほどで、疲れて座り込むような状態でした。

今現在は、日常生活に問題が無い程度、体力は回復しています。体力が回復すると同時に、術後化学療法に入りました。画像検査では見えない微細なガン細胞をたたき、再発を防ぐ目的の抗ガン剤治療のことです。

術前には使用していなかった、新しい抗ガン剤も追加してかなり副作用はきつくなりました。分子標的薬と呼ばれる薬です。これはガン細胞が持っている「特徴的な部分」に反応するよう作られた薬です。

副作用の出ない「夢の薬」と言われたこともあるようですが、実際は副作用はきつく、特に発疹、指先のひび割れなどが出ています。とくに発疹に関しては、最初の一週間はかゆすぎて、発狂しそうでした。

今現在の抗ガン剤治療では、口内炎が大量にできて全く食事ができなくなったり、味覚障害でなにを食べてもまずくて食欲がなくなったり、指先がしびれたりと色々不快な症状が出ています。

それでも、なるべく休薬期間を設けずに投与していきたいと考えています。なぜなら、この病気の再発率はかなり高く、50%の確率で2年以内に再発するので、この確率を少しでも下げるために、つらくても抗ガン剤を続けています。